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視点
複雑系をマネジする:知・技・サイエンス
横浜国立大学 大学院国際社会科学研究科 教授 岡田 依里 当会会員(個人会員)
岡田 依里氏
 現在、半導体分野ではナノテクノロジーに基づく新規材料開発が開発の戦略的方向性とされる。微細化の進展によるリーク電流の増大に備えて新規の材料が必要となるためで、物理限界を超えるプロジェクトとされる。これは、技術のロードマップや世界的な知的財産の分布をみて適切な方向性だが、わが国の場合、より微妙な論点がある。
 日本人は古来より、自然と共生して生きてきたと言われる。刀をつくる職人にせよ器を焼く職人にせよ、自然の息吹を感じながら感謝の念を抱いてものをつくる感性を持ち合わせていた。常盤文克元・花王(株)会長はこうした職人のあり方をふまえ、「自然界から知識をいただく知の経営」を唱えた。ここで自然の知を取り入れるとは、単に環境に配慮するとか循環型の製造を行うという、技術的側面だけをいうのでなく、企業も人も、自然の中で活かされている、という感覚に立ち返ることを言う。
 こうしたものづくりの知を受け継ぐゆえか、先端技術企業ほど強く悩むところがある。複数の半導体企業によると、設計が3次元CADになり効率性が増した反面、技術者が職人技をこらすことを忘れ始めたのではないかという反省がある。
 現実には、設計がフロー化・3次元CAD化しても解決すべき課題は多くある。設計フローをみると、○システム設計、○機能設計、○ 論理設計に進み、○ネットリスト(設計から回路化へのつながりを考え回路の接続状態を表現したデータ)を得てから○レイアウト設計に進み、○回路に落とす。ここではデザインルールからのアラウアンスの幅がどんどん小さくなり、以前のように初期段階の誤差を後から吸収するということはない。ここで差別化アプローチとしては、1)誤差の極小化と、2)フローの上流段階(論理設計まで)でいかに将来(下流段階:レイアウト設計)を考えて組み込み設計するか、であり、実際につくられる配置配線の質を左右する課題も多い。にもかかわらず悩むのは、ものづくりのDNAがなさしめる可能性がある。
 ナノテクの要素たる粒子制御は日本人が古来行ってきた焼物につながると言う。物理限界を超える開発の戦略的方向性が、実は受けつがれた永遠性に根ざしていることを覚えるとき、企業にも1人ひとりの個人にも、戦略を超えた道筋が開けるのではなかろうか。
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